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厚生年金基金解散の受給者への影響

厚生年金基金の解散において確認すべきこと

平成26年4月1日に厚生年金基金制度を改正する法律が施行されました。
この法律によって、多くの基金が解散に向かうことが予想されています。当ホームページでは、受給者・加入員・待期者・事業主などの関係者が基金の解散において確認すべきポイントをご紹介します。

厚生年金基金の解散における受給者の確認ポイント

 厚生年金基金の年金受給者にとって、基金が解散して年金が減額になることは、日々の生活に影響する重大な事態です。しかし、厚生年金基金に関する情報が受給者のみなさまへ充分には伝わっていないのが現状です。受給者のみなさまがご自身で確認できるチェックポイントをご案内します。

正確な年金額の把握
基金の今後の運営方針
基金解散後の生活設計


正確な年金額を把握
 厚生年金基金は、厚生年金の一部を国に代わって運営しております。そのため、基金の年金は「厚生年金の代行部分(以下、代行部分)」と「基金の独自給付の部分(以下、基金独自部分)」に分けることができます。
 まずは、「代行部分」の年金額について確認しましょう。「代行部分」については、基金が解散した場合でも必ず保障されます。基金の解散が国に認可されると、日本年金機構が「代行部分」の支給を基金から引き継ぎます。日本年金機構から国民年金や厚生年金を受給されている方は、それらと「代行部分」を併せて支給されます。 この「代行部分」の金額を「代行相当額」といいます。「代行相当額」は日本年金機構(年金事務所)と厚生年金基金の事務局の2か所で確認できます。

日本年金機構(年金事務所)へ問い合わせる
 日本年金機構へ問い合わせた際に、「基金の年金については、基金事務局に聞いてください」と回答されることがあります。その場合は、「代行相当額(だいこうそうとうがく)の金額を教えて欲しい」と伝えてください。日本年金機構は、基金年金のうち「代行相当額」についてのみ把握しております。ただし、2つ以上の厚生年金基金の加入員期間がある方は、各期間分を合算した代行相当額ですので、ご注意ください。

厚生年金基金の事務局へ問い合わせる
 厚生年金基金の事務局によっては、代行相当額の回答を拒否したり、回答を渋ったりすることがあるかもしれません。しかし、ご自身の正確な年金額を把握するのは、今後の生活設計を考えるうえで大切なことですので、粘り強く交渉しましょう。

「代行相当額」は、必ず保障される金額です。今後の生活設計を考える際に必要ですので、きちんと確認してみましょう。


基金の今後の運営方針
 次に「基金独自部分」について説明します。まずは厚生年金基金の年金証書をご用意ください。そこに書かれた年金額から、前述した「代行相当額」を差し引いた金額が「基金独自部分」の年金額です。年金証書が見当たらない場合やよくわからない場合は、厚生年金基金の事務局に問い合わせましょう。なお、日本年金機構は「基金独自部分」については全く把握しておりませんのでご注意ください。 さて、今後の「基金独自部分」の給付については、基金の運営方針が影響します。運営方針とは、改正法をうけての基金の選択のことです。なお、年金資産の財政状況によって、選択可能な方針は異なります。

基金の運営方針(選択肢の例)と受給者への影響
厚生年金基金として存続
受給者はこれまでどおりの年金を受け取れます。
代行返上
代行部分については、国からの支給に変更となります。
基金独自部分については、基金からこれまでどおりの年金を受け取れます。
要するに、総額の年金額についてはこれまでと変わりません。
解散後に新しい制度へ移行
代行部分については、国からの支給に変更となります。
基金独自部分については、一時金で分配されるか、新制度から支給されます。
単純な解散
代行部分については、国からの支給に変更となります。
基金独自部分については、一時金で分配されます(財政状況によっては分配金が無い場合もあります)。

 上記をみると、受給者にとっては「基金として存続」や「代行返上」が好ましい選択肢であることがわかります。ただし、存続基準の厳格化等を考慮すると、「解散後に新しい制度へ移行」や「単純な解散」を選択する基金が多数を占めるでしょう。各基金で運営方針は異なりますので、基金のホームページ等で確認しましょう。


基金解散後の生活設計
 基金の方針が不明な場合や基金の方針が判明しても今後の年金額がよくわからない場合は、今後の生活に不安を感じる方も多いと思います。 対処方法としては、まずは「代行相当額」が保障されることを思い出してください。基金から支給されている年金額が「代行相当額」だけになっても生活できるかを確認しましょう。生活するのが難しい場合は、生活費の節約や預貯金の取り崩し等を検討する必要がございます。辛い試算ですが、検討してみましょう。
 次に「基金独自部分」については基金の財政状況や運営方針に影響されます。しかし、基金を取り巻く環境を鑑みると、今まで通りの年金額を受給できる方は少数になりそうです。「基金独自部分」はあくまでもプラスアルファだとお考えください。


 最後になりますが、「基金独自部分」には企業の福利厚生とともに、退職金としての性質もあったと考えられます。そのような制度が、受給者の理解を得られないまま終了するのには疑問を感じます。今後、国が運営する厚生年金本体の給付減額の恐れもあります。年金受給者は、現役従業員と違って、これから資産を積み上げていくのが困難な場合が多いです。そのため、今ある資産を有効に活用していく必要がございます。しっかりとした生活設計を考えて、年金減額時代に備えましょう。